安納芋と湧水が育てる「島外に売らない」黒豚|山田精肉店

カウンターにお肉を並べるためのショーケースがあり、その奥によく手入れをされた肉を切る機械がおいてある。

西之表市街地にある「山田精肉店」は、そんな何の変哲もないお店です。

しかし売られている黒豚が、実にとんでもないシロモノ。

そもそもこの店を知ったきっかけは、実家で出てきた豚肉のしょうが焼きが、尋常じゃなく美味しかった事でした。

一口食べて・・・

「Σ(゚Д゚)これのドコの肉?」

「安納の人がやっとい山田精肉店ちゅーとこやろー」

安納地区育ちの僕としては・・・行くしか無い!!

カウンターの奥には、おっちゃんが居ました。

ロースと三枚肉を買いながら、安納出身であることを告げると「あば!わーの家はどのへんやー?」というところから会話が始まるわけです。
(本当に口頭説明で家がわかっちゃうわけで、山田のおっちゃんは実家の横の家のおっちゃんと同級生でした)

annoubuta
これがロース。保管庫から出した状態の切りたてなので色合いが薄いですが、とけてくるとだんだんと肉の照りと色が増して・・・(*´∀`)

じっくり話してみると、このおっちゃんが、いわゆる「匠」でありまして・・・。

まず、山田精肉店は単なる肉屋ではなく、自分の豚小屋で育てた豚を、自分の店で売っています。だから豚の事なら何でも知っています。

豚は一貫して安納地区で育てており、いくつかの工夫があるとの事でした。

特徴をざっくりまとめると・・・

  • 本場安納地区で作った安納芋を食べさせている。
  • 安納地区の湧き水で育てている
  • 実は育て方にも安納地区だからできる工夫がある(これはヒミツ)

つまり、山田精肉店の豚は「さつま芋を食べ、湧き水を飲む」という野生のような食生活をしているのです。

※ちなみにぼくの実家も同じ湧き水から飲用水を得ており、水が異常にうまいです。大げさじゃなく甘みがある。これは種子島市街地の人もびっくりすると思います。

どうでしょうか、僕はなんていうか「うわぁ・・・すごい精肉店みつけちゃった((((;゚Д゚))))」という興奮しか無かったです。

でも、この山田のおっちゃんが「匠」なのは、ここから。

・・・匂いでわかるらしいです。

何がって、品質が。

豚も個体ごとに肉の仕上がりの差があって、山田精肉店クオリティの中でも、さらに頭ひとつ抜ける「極上」が完成したときは、さばいた瞬間の肉の匂い(ぶわっと極上肉の匂いが広がる)が違うとのこと。

さらにここからがカッコイイんですけど、十数年前のこと、一度だけ「究極」の肉質を持つ個体が完成したそうです。それは言葉に出来ない様な、美しい霜降りの安納黒豚だったそうで、その「究極」にもう一度出会うことを夢見て、山田さんは今も安納でストイックに豚を育てています。

何がストイックなのかって?

僕が「この店を紹介して、よそから電話が来たら売ってもらえるもの?」っていったら、笑いながら首を振り「面倒くさいから受けない」というわけです。
すかさず「面倒くさくても、そのほうが儲かるじゃないですか」というと、こんな言葉がかえって来ました。

yamadasan

人間は、口で言うほど完璧にできないもんだ。

どれだけ丁寧にやっても、意識してない理由や、ついうっかりで完璧ではなくなってしまう。 だから、常に目の前の豚をきちっと仕上げることに集中せんばいけん。

育て方を決めて、同じように育てればいいと思って飼育数を増やすと、必ず気づかないどこかで差が出る。

それはどうしようもない。仕事と人間っていうのはそういうもんだ。 だから数を決めて育てて、売れたら終わり。俺はそれでいい。

この信念は一貫しており、西之表市が都会で種子島をアピールするときに、山田さんの肉を使わせてくれと頼んだようなのですが「島の外から問い合わせが来たら断るのが面倒」という理由で「ウチの肉だということを表に出すな」という条件で、肉を提供したそうです。

「島の自然をふんだんに吸収した豚を、島の人に売る」それが、山田精肉店。

西之表では有名ですが、中種子・南種子のみなさんも、西之表に立ち寄った際は寄ってみてください。
※売値もそうとう長期間変えてないらしく、NETで安納芋黒豚の価格帯を調べてから行くと安くてビックリすると思います。

島外に出た家族や親戚への贈り物としてもオススメです。

※ロースと三枚肉は早めに売り切れることが多いそうですので、ご注意下さい。

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■山田精肉店

西之表市の市街地、わかさ公園の近くにあります。(日曜定休)
鹿児島県西之表市西之表14415−31

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